私が父から家業を受け継いだのは2016年。幼い頃から父の後を継ぐことはあたりまえの感覚でした。地元のお祭りやバザーなどには、うちから甘酒を造って出していましたし、「麹」を扱っている会社だということも理解していました。でも、私自身が発酵とか醸造に興味があったわけではないんです。暗記中心の化学に興味が持てなかった。だから大学も得意な文系に進み、その後は渡米して国際経営学修士MBAを取得。金融工学、ファイナンス、マネジメントなどを学びました。ここだけの話、「種麹」というものを初めて目にしたのも、成人して会社に携わるようになってからでした。
社を継いで以降は、地元の青年会議所で活動したりしていましたが、コロナ禍に入り、自分や会社と向き合う時間ができたときに見つけたのが、完全オンラインによる社会人のための大学院「京都藝術大学大学院 学際デザイン研究領域」の第一期生募集でした。学部や分野を問わず、学問の枠を超えた人々と交流しながら、暮らしや社会など幅広い問題について考察を重ね「デザイン(=構築)」していく、そんなカリキュラムなのですが、きっと面白い出会いがあるだろうと思い立って出願して合格。同期は宇宙飛行士の米田あゆさんをはじめ、本当にとんでもなくすばらしい方々との出会いとなりました。ほかにも、伝統文化や歴史をさまざまな知識や側面から捉え直し、検証・整理するような考え方も学びました。ここで得た刺激や人脈は今も仕事に生きていて、その実践のひとつが「KOJI THE KITCHEN」です。
(写真上)麹菌がバックプリントされたオリジナルの「たねこうじ」Tシャツ、(写真下)仕込みに使う生麹