故人が亡くなって1年後の命日に執り行われる「一周忌」は、年忌法要のなかでも特に重要とされています。今回は一周忌の意味や、施主が行うべき準備、謝礼やお返しなどの相場について解説します。
一周忌とは遺族にとって大きな節目
一周忌法要とは、故人が亡くなってから1年後の命日に行われる年忌法要のことで、ご遺族にとって大きな節目です。本来は四十九日法要の次は百箇日法要なのですが、現代では参列者の都合を考慮して百箇日法要はせず、一周忌法要を行うことが一般的です。施主は一周忌法要に向けて、日程や会場決め、お布施の用意など、さまざまな準備を行います。
一回忌と一周忌との違いについて
「一周忌」と「一回忌」は響きがに似ているために混同されがちですが、まったく違う意味を持ちます。先に述べたように、「一周忌」は故人が亡くなってから1年後であるのに対し、「一回忌」は亡くなった日すなわち命日を指し、翌年以降は二回忌、三回忌と数えます。
つまり、故人が亡くなった日は「一回忌」、翌年の命日は「二回忌」であり「一周忌」でもあるということです。
年忌法要について
故人が亡くなって一年後の一周忌を迎えたあとは、三回忌(満2年)、七回忌(満6年)、十三回忌(満12年)、十七回忌(満16年)、二十三回忌(満22年)、二十七回忌(満26年)、三十三回忌(満32年)のように、節目の年に年忌(法要)を行います。三回忌までは親族以外の関係者、親しい人を招待することがありますが、七回忌以降は親族のみで営まれることが一般的です。
行う時期や主な内容は以下の表をご確認ください。
また、一般的には三十三回忌か五十回忌を最終の法要とし、これを「弔い上げ法要(とむらいあげほうよう)」と呼びます。以降の法要・供養は、寺院と相談して行うとよいでしょう。
年忌法要のマナーはどの年でもほとんど変わりませんが、一周忌と三回忌以降で引き出物(出席者からいただいたお供え・御仏前のお返し)の熨斗(のし)に添える水引の種類を使い分けます。一周忌までは「黒白か双銀の結び切りの水引」、三回忌以降は「青白か黄白の結び切り」です。
年忌法要 | 行う時期 (命日からの年数) |
主な内容 |
一周忌 | 1年目 | 遺族・親族・友人・知人が参列し、読経、焼香、食事などを行う。 |
三回忌 | 2年目 | 遺族・親族・友人・知人が参列し、読経、焼香、食事などを行う。 |
七回忌 | 6年目 | 一般的には遺族や親族のみで供養する。 |
十三回忌 | 12年目 | |
十七回忌 | 16年目 | |
二十三回忌 | 22年目 | |
二十七回忌 | 26年目 | |
三十三回忌 | 32年目 | |
三十七回忌 | 36年目 | |
五十回忌 | 49年目 |
「◯周忌」「◯回忌」の数え方
年忌法要は、命日から一年後の一周忌、その後の三回忌、七回忌、十三回忌と続きます。「周」「回」と、異なる漢字があてられていることがポイントです。「◯回忌」は亡くなった日を含めて数えるため、亡くなってから2年後が三回忌、6年後が七回忌、12年後が十三回忌となります。
一周忌法要の準備:2カ月前から
一周忌法要は事前準備が多くあります。喪主・施主は親戚・親族と相談して進めていくとよいでしょう。法要の準備は余裕を持って2カ月前から、遅くとも1カ月前には着手します。
1 菩提寺と日程を相談する
菩提寺(ぼだいじ。お墓があるお寺)と相談して、一周忌法要の日程を決めましょう。命日が平日にあたって都合が悪い場合には、ずらすことも可能です。ただし、命日のあとではなく、直前の土日祝日など前倒しするのが習わしです。菩提寺や出席者の予定も踏まえて検討してください。お寺と予定が合わない事態を避けるため、特に土日祝日を希望する場合は、1カ月前には予約相談をするのがおすすめです。
お寺とのお付き合いがない場合は、親戚・友人などからお寺を紹介してもらうほか、葬儀をお願いしたお寺に相談することもできます。また、最近ではインターネット上で僧侶(お坊さん)を手配できるサービスもあります。
2 会場を決める
一周忌法要の会場をどこにするかを決めましょう。菩提寺、自宅、斎場、ホテルなどの選択肢があります。法要ではお墓参りをするため、お墓のある場所からアクセスのよい会場を選びます。
3 出席者への案内、または案内状の送付
出席者へ一周忌法要の案内をします。遺族と親族のみなど小規模な法要は電話でお伝えしても構わないのですが、案内状があれば日時や場所の伝え間違えが防げます。仕事の関係者も含めるなど規模が大きい場合や、ふだん遺族とのお付き合いのない方を招待する場合には、葬儀の受付名簿などを参考にして案内状を作成しましょう。案内状は法要の1カ月前を目安に送付し、出欠席の連絡を2週間前までにいただくのが一般的です。
一周忌法要の準備:2週間前
一周忌法要の2週間前くらいから、より具体的な準備に入ります。
1 お斎(会食)の手配
一周忌法要のあとは会食を開くのが一般的で、この会食をお斎(おとき)と言います。参列者がスムーズに移動できるように、法要の会場から近い場所を選びましょう。寺院で法要を行う場合は、寺院の会館などを利用できます。自宅や料亭、レストランも選択肢のひとつです。自宅を会食会場にする際には、仕出しの法要弁当などを予約しましょう。
お斎(会食)では精進料理が一般的でしたが、最近ではこの限りではありません。ただし、伊勢海老や鯛といったおめでたいイメージの食材は避けます。参列者の年齢などを踏まえて、ご高齢者が多い場合には脂っこいものや硬いものを避けると親切です。
なお、お斎(会食)を行わない場合は、引出物とともに酒の小瓶や折詰弁当を用意します。
2 引出物の手配
「香典」「香典返し」は葬儀や四十九日における金品のことで、四十九日を過ぎたらそれぞれ「お供え」「引出物」に呼び方が変わることを覚えておきましょう。一周忌法要では、出席者が「お供え」をして、喪家側は「お斎(会食)」と「引出物」で返礼をします。
香典返しの相場は「半返し」といって、香典の半分の金額が目安となります。一周忌法要ではお供えの7割〜全額程度を「お膳(会食)+引出物」として用意します。お供えは1人あたり10,000~20,000円を包むケースが多く、それに対してお斎(会食)は5,000~10,000円前後、引出物は2,000~5,000円前後と考えるとよいでしょう。ただし、この相場は必ずというものではなく、地域によっては「お膳(会食)+引出物」はお供え以上の金額でというケースや、お供えはお菓子程度でお願いして、お斎(会食)は用意しないというケースもあります。
一周忌法要の引出物の選び方は香典返しと同様で、お茶やのりなどの乾物、石鹸や洗剤などの「消えもの(使ったらなくなる生活用品)」が適しています。そのほか、出席者の荷物にならないように、カタログギフトをお渡しするのもおすすめです。一周忌法要では、引出物の熨斗(のし)の表書きは「粗供養」「志」などとし、水引は黒白か双銀の結び切りを用います。
3 お布施、お車代、御膳料の準備
僧侶にお渡しするお礼には、お布施(お経料)、お車代、お膳料があり、ケースに応じて用意します。金額の相場は以下の表のとおりですが、地域やお寺、宗派、菩提寺の有無によって異なる場合があるため、事前にお寺に聞いておくと安心です。
一周忌法要のお布施、お車料、お膳料の包み方は2通りあり、郵便番号記入欄のない白い封筒が最も多く用いられています。二重封筒は「不幸が重なる」を連想させるため、避けましょう。また、僧侶にお渡しするお金は不祝儀ではないので、表書きは黒墨を用います。
- 白い封筒(郵便番号記入欄などのない、真っ白なもの)
- お札を半紙で包んでから、奉書紙(ほうしょし・ほうしょがみ)に包む
封筒の裏には、左下に住所、電話番号を書き、その横に一段下げて、封入した金額を旧字体の漢数字を用いて「金 ○萬円」などと書きます。ただし、本来の意味では金額の記載は不要です。近年では寺院の経理、税務の関係上書いたほうがよいケース、従来どおり記載が不要なケースどちらもあるので、こちらも事前に確認しておいた方がいいでしょう。
お渡しするタイミングは、法要が終わって僧侶が退出するときか、お斎(会食)に同席する場合には会食後にお渡しします。小さなお盆などに載せてお渡しするとより丁寧です。
お布施:20,000〜30,000円
僧侶への謝礼です。白い封筒が一般的ですが、もし水引をかける場合は、双銀、もしくは白黒の水引のついた封筒(関西では黄色と白の水引きも)が用いられます。表書きは上段に「御布施」「お布施」「御礼」「御経料」、下段に施主の氏名もしくは姓(「〇〇家」)を記入します。
お車代:5,000~10,000円
いわゆる交通費のことですが、謝礼の意味合いもあるため実費ではありません。ただし、「僧侶の寺院で法要を行う」「遺族が自家用車などで送迎する」「遺族がタクシーを手配し、実費を直接タクシー会社に支払う」という場合は、お車代は不要です。
表書きは上段に「御車代」、下段に施主の氏名もしくは姓(「〇〇家」)を記入します。
お膳料:5,000円~10,000円
僧侶がお斎を辞退した場合に、食事の代わりに用意します。表書きは上段に「御膳料」、下段に施主の氏名もしくは姓(「〇〇家」)を記入します。
4 供花、お供えの手配
供花(仏壇にお供えする花)やお供え物は、前日までに手配しておく必要があります。一周忌法要では、出席者は金封かお供え物のどちらかを持参してくださいます。
供花は四十九日法要までは白い花が選ばれますが、一周忌法要では淡い色や明るい色合いの花もよいとされます。鮮やかな色や、香りの強い花は避けて選んでみてください。
お供え物は、カットされていない果物やお菓子、お茶、ジュース、ビールやお酒などのうち、常温保存が可能なものが適しています。肉や魚は殺生につながるので、故人がお好きなものであってもお供えできません。