香典・香典返しを辞退する方法、押さえておくべきマナーを詳しく解説

イラスト:葬儀の準備をする若者。傍らにいる香典袋を持った(渡そうとしている)母親に「香典は辞退するからいらないよ」と伝えて「アンタが辞退できるもんじゃないのよ…」とあきれられている

葬儀では遺族に香典を差し上げることが一般的となっていますが、最近では参列者の負担を減らすといった理由で香典の辞退を考える方が増えています。一方で遺族に負担や気遣いをかけないといった理由から、香典を差し上げる側でも香典返しを辞退するケースが増えています。そこで今回は、香典や香典返しを辞退する方法と、押さえておくべきマナーについてそれぞれ解説していきます。

香典と香典返しの意味・違い

はじめに、「香典」と「香典返し」についておさらいしておきましょう。

香典とは

そもそも香典とは、故人に花や線香を供える代わりに遺族へ差し上げる金品のことを指す仏教用語です。言葉の意味としては品物も含まれますが、現在は金銭のことをいうのが一般的です。また仏教用語ではありますが、神式やキリスト教式の葬儀でお供えされる金銭も、香典と俗称されることがよくあります。

香典返しとは

香典返しとは、遺族側から香典をくださった方へ、弔事を滞りなく終えたことへの感謝の気持ちを伝える贈り物です。香典は金銭が一般的ですが、香典返しは品物か、それに準ずるものがほとんどです。これは「お礼やお返しに金銭を包むことは、金額がはっきりわかって下品だと見なされ、また『お相手が生活に困っているから金銭で』という含みもあるので、特に目上の方には失礼にあたる」という考え方によります。
なお、神式やキリスト教式の葬儀で遺族側からお返しする贈り物も、香典返しと俗称されることがよくあります。

香典を辞退する主な理由

香典を辞退できるのは「遺族側」だけです。香典は葬儀の参加料金ではありませんから、持参せずに参列することもないとは言い切れませんが、他の参列者が香典を持参する葬儀に、大人が特に理由もなく手ぶらで臨むのは、常識に欠けるという考え方が一般的です。
遺族が香典を辞退する理由にはさまざまなものがあります。主なものを見ていきましょう。

参列者の負担を軽減したい

香典の相場は、関係の遠い方でも数千円、近い方では数万円にのぼることもあります。また遠方から参列する場合、参列者には香典とは別に交通費や宿泊費などの費用が掛かるケースも考えられます。こうした参列者の金銭的な負担を軽減したいという思いから、香典を辞退するケースは多いと見られます。

香典返しの手間をなくしたい

「香典返し」はいただいた香典の額に応じて用意するものとされています。葬儀当日、みなさんに同じ品を差し上げる「当日返し」の場合でも、高額の香典をいただいた方には後日別途、差額相当の香典返しを用意するのが一般的です。少子高齢化で家族の人数も減り、こうしたギフトの手配にかかる手間や時間の負担も限られた遺族に集中しがちになっています。そのため、あらかじめやり取りを避けるつもりで、香典を辞退するケースも多いようです。

小規模な葬儀にしたい

従来は多くの人を葬儀に招待し、香典を葬儀費用に充てることで、より立派なお見送りをするという考え方も一般的でした。しかし、近年では「親しかった方のみでお見送りしたい」と、身内以外の方を招待しない「家族葬」を実施する遺族も増えています。こうした場合、施主や遺族の金銭的負担が少ない小規模な葬儀とする代わりに、参列者の金銭的負担も軽減しようと、香典辞退を選択することもよくあるようです。

香典辞退のデメリット

香典を辞退すると、香典を葬儀費用に充てられなくなりますから、その分は遺族が負担するか、本人の遺産から賄わなければなりません。「香典を辞退したい」と考えても、葬儀費用が心もとなければ難しい可能性もあるのです。
また、「こんな粗末な葬儀になるなら、香典辞退などしないでほしかった」という風に、香典辞退の意図が参列者にうまく伝わらず、関係がこじれるリスクも無いとは言えません。

香典辞退をスマートに伝える方法

香典辞退について、参列者の気持ちを無下にしないためには、やはり納得できる理由を伝えるのがよいでしょう。中でも「故人の遺志」が理由であれば「遺族の都合で粗末にするわけではないのか」と納得していただけるはずです。
香典辞退の旨については、受付の脇に掲示を出す方法もありますが、参列者にも準備がありますから、葬儀の詳細を電話やメールなどで連絡する際、直接伝えておくのがおすすめです。

香典辞退の文例

亡くなった旨、生前の交流に対するお礼、葬儀の場所・日時(家族葬で一般参列を遠慮いただく場合はその旨)などひと通りの内容をお伝えした後、最後に付け加えるとよいでしょう。

電話での会話例

母は生前「葬儀はしなくてもいい」と言うほど、周りの負担にならないささやかな見送りを望んでおりました。意向を汲んで、香典やお供えは遠慮したいと存じます。故人の遺志でもありますので、どうかご了承ください。

メ―ル、FAXなどでの文例

故人の遺志により、香典などのご厚志につきましては失礼ながらご辞退申し上げ、お気持ちだけありがたく頂戴いたします。

香典返しを辞退する主な理由

香典返しを辞退できるのは「参列者側」だけです。遺族が香典を辞退した場合はもちろんこの限りではありませんが、参列者が香典を持参した葬儀で、もらいっぱなしにして香典返しを用意しないのは、常識に欠ける行為だと考えていいでしょう。
香典を持参した参列者が、香典返しを辞退する理由には、主に以下のようなものが考えられます。

遺族の負担を軽減したい

家族を亡くすという大変な状況の最中にある遺族。その心労を思いやって「参列者に香典返しなどで気を遣う必要がないように」と考え、香典返しを辞退する参列者は最も多いと見ていいでしょう。特に、家計を支える家族が亡くなった場合などにはよくあるようです。

そもそも香典返しの受け取りが企業で禁止されている

公的機関に所属している人が香典を出す場合や、企業代表として香典を出す場合、「就業規則などによって香典返しの受け取りが禁止されている」こともあります。この場合、文字通り「受け取れない」立場ですから、遠慮と勘違いして無理に渡したりしてはいけません。

香典を少額にしている

関係の遠い方からの連名での香典など、個々に香典返しをするとむしろ香典の額を超えてしまうような場合、香典返しを辞退することもあります。

香典返し辞退をスマートに伝える方法

葬儀は遺族にとって慌ただしい状況であることが多々あります。香典返しを辞退する場合、口頭で伝えたのでは後々行き違いが起きかねません。簡素でも文章にして遺族に伝えておくと、どなたにも伝わりやすく負担になりません。主な伝え方を見ていきましょう。

香典袋の中袋に記載する

中袋の表、または裏面の住所・氏名を書いた左脇に次のような文言を添えておきましょう。

文例

  • お香典返しは辞退させていただきます
  • お返しのお心遣いは遠慮させていただきます
  • お香典返しのご配慮は不要でございます

一筆箋を添える

香典袋の中に香典返し辞退の旨を記した一筆箋を入れておく方法です。袋に直接書くよりも余裕があるので、次の通りお悔やみの旨なども書き添えます。お悔やみごとですので、一筆箋は白無地か、色味や絵柄をできるだけ抑えたものを選びたいところです。

一筆箋での香典辞退の文例

(喪主)様

心よりお悔やみ申し上げます

誠に勝手ながら お返しのお心遣いは遠慮させていただきます

(故人)様のご冥福をお祈り申し上げます

(差出人名 ※一筆箋の下端に寄せる)

香典返しを辞退された方にもお礼の気持ちは伝えて

香典返しを辞退された方に「香典返し」として贈り物をするのは、遺族を気づかう厚意を無下にしたり、受け取れない立場の方に無理を強いたりすることになりますので、控えましょう。
ただ、お礼の気持ちを伝えることはその限りではありませんから、会葬御礼だけは差し上げたり、忌明け後にお礼状を差し上げたりするとよいでしょう。

高額の香典をいただいた方などへ、少しだけでもお返ししたいといった場合は、後日ご挨拶にうかがい、その手土産として贈り物を差し上げるとよいでしょう。また、喪中であってもお中元・お歳暮のやりとりは控えなくてよいとされていますから、季節のご挨拶として差し上げても構いません。

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