山形の森の木を花束に

ヒノキに杉、カエデ、ホオノキ、松にブナ、ヒバ。山形の多彩な木材を贅沢に使い、優雅なアレンジメントに仕上げた「mokuka(木花)」。本物の花の造形に近づけて細かく丁寧に作り込んだ木製の工芸品です。
木花を手掛けるのは創業70年を超える地元の製材会社、相原木材。三代目の現・相原社長と寺崎専務の2人は、高校、大学と同級生の間柄。共に地元に根をおろし、製材の仕事に携わってきましたが、山形の「木」の良さをもっと多くの人に届けたいと始めたのが「mokuka(木花)」です。
木の香り漂う工房で
生まれる木花

大切な人に「花」を贈るように「木」を贈れたら。木の強さ、優しさを活かせば、贈り物として喜ばれるものが作れるはず。思いが先行して始めた新事業、製材のことはよく分かっていても、花づくりは素人。花の作り方を一から調べ、試作を重ねながら、手探りで木花を形にしてきました。
現在作っている木花はバラやユリなど10種類。専用の機械で0.1ミリの薄さにスライスした木から花びらを1枚ずつ切り出し、微妙なカーブを施しながら手で花の形に作っていく作業は、集中力とセンスが求められます。特に難易度が高いのは、花びらの自然な丸みを作り出すこと。木はしなやかとはいえ、ちょっとした力加減で割れたり、折れたりするので、コツをつかむまでは大変だったといいます。
どの木で作れば生き生きとした花が生まれるか、素材のチョイスも大切です。上品な白やピンクベージュの花びらをたっぷり使った大きなバラは、ヒノキとカエデ。木目が美しいユリの花びらは杉。このように花ごとに、ぴったりくる色や木目を持つ材木を選ぶことができるのは、長年、製材業を通して木と向かい合ってきたからこそ。経験と直感が、調和の取れた木花制作のベースとなっているのです。
昨年は「ウッドデザイン賞2017」に出品。ウッドデザイン賞は木製品の普及と木に関わる技術向上を奨励する大きな賞。山形からは天童木工と並んで木花が入賞しました。その後、都内にポップアップショップを出店したり、地元テレビの取材を受けるなど注目を集めています。

自然な色の変化も楽しんで

「木の優しさ、柔らかさ、温かみ。木花が空間にあると、空気が和らぎます。その心地よさを、普段、木との触れ合いがない人ほど体感してもらえたら」と寺崎専務。木花のメンテナンスは、直射日光を避けることくらい。他の木工製品と同じように、年月とともに変化する色も楽しんでほしいといいます。工房には、白い木肌だったカエデのバラが、艶やかなあめ色になったものが置かれています。
「記念日に贈った木花が、その方と年月を共にし、『いい色になったね』と振り返っていただけるような商品でありたい、と願っています」。